ユーザー訪問レポート 第5回 平成16年9月11日
by 牛島
今回の訪問先は、北海道にお住まいの上田さんのお宅です。

上田さん宅に到着すると、まず、印象に残るのがわらぶき屋根。なんでもアイヌの方々のわらぶき屋根を参考にしたとのこと。

なんともロケーションの良い、上田さん宅。自然などに興味を抱く人であれば、絶対住みたい!と思う程、惚れ惚れする環境です。
本当に羨ましいロケーションの中、生活されている上田さんに暖かく迎えられました。

お伺いした際のエピソードをまとめてみました。
このわらぶき屋根が印象的。(この建物は上田さんの工房) 上田さんのお宅の近くの国道を走っていると、左手は海、右手はトラピスト修道院。
(クッキーやバターで有名ですね。)
そこからやや走ったところ、右手に三角屋根。

おぉ!あれだ!
あの三角屋根に違いない。

予想通り、上田さんのお宅でした。

牛島

こんにちは。

上田
遠くから大変だったでしょ?
まぁ、お茶でもどうぞ。

と北海道なりのお出迎え。
おうちの中へ入ると、居間のど真ん中に囲炉裏。
そして暖房は薪ストーブ。
その生活スタイルに惚れ惚れしてしまった。
(囲炉裏がある居間に憧れているのです。)

牛島

自然エネルギーを始めようと思ったきっかけはなんでしょうか?

上田
昔から、有限資源を使う発電はどうか?と思っていたんです。
そんな時に、道南のNPO法人で風力発電の設置場所を公募していたので、応募してみました。
結果は落選でしたけどね。

牛島
それは残念でしたね。

上田
それから、やってみたい。という気持ちが大きくなって、自然エネルギーを扱っている会社を探したんだけれど、なかなか道南には無くてね。
そのNPOの代表の方に、札幌にありますよ。と教えてもらって、電話したのが牛島さんのところだったの。

牛島
何回も足を運んでいただきましたよね。

上田
いつも、忙しい時にお邪魔して、本当にすみません。
悪いなぁ。と思いつつ、電話しちゃうんです。
自慢の工房の前で


元々の趣味。ろくろ。

牛島
いえいえ。そんなことないですよ。
システムの打ち合わせは重要です。
上田さんの場合、特殊な物を動かしますよね。

ちなみに私のお客様で、ソーラーパネルや風力で得た電気をこのような製品に使うのは初めてですよ。

上田
そうなんですか?「ろくろ」ですよね。
この歳になって趣味が増えたのは嬉しいですね。
ろくろの為の趣味といった感じです。

牛島
そう言っていただけると私も嬉しいです。

上田
趣味の為の趣味ですからね。
本当に天候次第で、ろくろを回すか回さないかを決めるんですよ。

牛島

なるほど。ところで、このろくろを回しているのは、どんな機器でしたか?


上田
風力発電機がWG913、70Wのソーラーパネルが2枚。
DC-ACインバーター(600W正弦波)とチャージコントローラー、バッテリーが100Ahが2台。

牛島
今までのエピソードなどありますか?

上田

設置した次の日にインバーターが赤いランプになってね。(低電圧の赤ランプ)えっ!と思ってみたら、インバーターの外側に雨水が何滴か・・・。
もうだめだ。と思って、牛島さんのところに電話したの。ちょうど私も札幌に行く用事があったから、事務所によって、点検してもらったら、単純にバッテリーが低電圧になってるだけだったもんね。いやぁ。あの時は壊しちゃったと思って本当に驚きました。

それから、なかなか赤ランプから切り替わらなくて、また、牛島さんに聞いたら、発電していないみたいですね。って言われた時は、もうどうしようかと思った。
素人が何度も見て、わからなかった所をまるで見ているかのようにアドバイスしてくれるんだもん。
本当に感謝してますよ。


この収納ボックスも自作

遠くに見える山々は下北半島(青森県) 牛島
いえいえ。結局は、違うところが原因でしたよね。(^^ゞ

上田
そうだったの。ダイオードが逆につけてあったり、ヒューズが切れていたり根本的な問題でした。(笑)

牛島
まぁ、大事に至らなかったのが不幸中の幸いですね。

上田
いやぁ、あれを治してから、しっかりと発電した時は、嬉しかった。

それまでは、いろいろな人が見に来ては、風力の調子はどう?とか聞いてくるから、どきどきしながら答えていたの。(笑)

それからは、安心して答えていますよ。(笑)

すぐ近くに修道院があるでしょ。
あそこの人達が、散歩に来るんだよね。
そして、風車が回っていると、ニコニコして見て行くんですよ。

牛島
ここは景色が良いし、風力発電機もついているし、皆さん楽しいのではないでしょうか?

上田
そうみたいですね。
でも、今日は本当に運が良いですよ。
大間も見えるし、尻屋崎も見えるし、こんな遠くまで見えるのは年に何回あるかどうか。

牛島
へぇ〜。そうなんですか。
こんな景色の良いところだったら、住みたくなっちゃいますね。

上田
どうです?ノースパワー道南支店の候補地に。(笑)

牛島
ありがとうございます。(笑)
この窯ももしかして自作ですか?

上田
そうです。最初のレンガは自分で買ってきて組んだんだけど、思ったよりも温度が上がってね、更に欲が出てきて、もう一段レンガを置こうかと思ってね。
もう趣味というか職業と言っても良いくらい。自作の窯です。


窯用にレンガも自作。凄いとしか言いようがありません。
牛島
自作とは思えないほど、しっかり作られていますよね。このレンガは、もしかしてこの木枠で作ってるとか?

上田
そうですよ。
母屋を建てたときに、粘土が出てきてね。
その粘土をトイレの横に埋めてあるんです。それを掘り返しては、この枠に入れて、形を作って、窯で焼いてるんですよ。

牛島

ほぉ〜。では、ろくろで製作した物を焼くために自作のレンガを作るんですね。凄い。

上田
買うと高いんだもん。(笑)
せっかく、タダで利用できるし、資源の有効活用です。

牛島
恐れ入ります。

上田
この生活も慣れると楽しいですよ。
周りは農家で、野菜もたまにもらうし、卵も近くに売ってるし、牛乳は下のおうちに鍋持って、分けてもらうんです。あんまりお金かからないの。

うちの娘もいつかは自然の中で生活したいと思っているようなので、その時にはもう少しシステムを大きくするかも。
また、牛島さんにお願いしますよ。

牛島
ありがとうございます。
娘さんは、北海道にお住まいではないんですか?

上田
そうなんです。今は関東の方に住んでいます。
昔、建築系の仕事をしていて、この小屋をデザインしてくれて、最初の1年くらい手伝ってくれたんですけどね。そのうち、私結婚します。なんて言って、嫁いでいっちゃった。

牛島
ん?上田さんちょっと待ってください。
今、この小屋を手伝ってくれたとおっしゃられましたけど、もしかして自作ですか??

一段上がったところは、オンドル。(床暖みたいなもの)ここでうとうとする時もあるとか。


なんとこの工房も3年かけて自作したとのこと。脱帽です。
上田
そうですよ。2年はかかるかなぁ?なんて思ってたんですけど、一人いなくなったので、3年かかっちゃいました。

牛島
脱帽です。
物づくりが好きなんですね。

上田
そうですねぇ。このわらぶき屋根って、雨漏り一切しないんですよ。
最初は、少しぐらい雨漏りするのかな?と思っていたんですが、全然しませんね。昔の人の知恵ですね。
それよりも天井のテント部分と屋根のつなぎ目からは雨漏りするんですよ。
何回も補修してるんですけどね。(笑)

牛島
良い意味で、わらぶき屋根と現代の機械が、ミスマッチなところが面白いと思います。
このギャップが、いろいろな人の興味を抱かせるところなんじゃないかな?と思いますよ。

牛島
実際に発電してみて、苦情や意見、何か変わったことなどありましたか?

上田
苦情なんかはないですね。
逆に見に来る方が必ずと言っていいほど、興味を持ってくれます。
そこに海峡線が走ってて、たまに手を振ってくれる人もいるんですよ。

あ、牛島さん見て!
(指差す方向にはドラえもん列車)

1日何回も通るわけじゃないから珍しいんだよ。
この間、孫が来た時に、ドラえもん列車に乗せたら、喜んでねぇ。(お孫さんの話をする時はすっかりおばあちゃんでした。)

自分自身も天候が気になるようになりました。
うちは風が強いと思っていたけれども、風力発電する為の風は、もっと強いものが必要。本当に勉強になりました。
無風の時も結構多いですよ。

函館山をバックに上田さんとツーショット

今回、取材にご協力いただいた上田さんのプロフィール
お名前 上田さん
お住まい 北海道上磯町
ご家族構成 旦那様とお二人
ご趣味 陶芸
牛島
そうですね。生活の場面と風力発電の風は違いますね。
最後にこれから始めようとする方へメッセージなどありましたらどうぞ。

上田
アドバイスなんて、始めたばかりなので、何もできないですが、もし、こちらにお越しの際には、見学して行っていただければ嬉しいですね。

それで、少しでも自然エネルギーに興味を持っていただければと思います。

牛島
そういう方がいらっしゃいましたら、ご紹介させていただきますのでよろしくお願い致します。

今回の取材をご快諾いただき、本当にありがとうございました。
今後ともよろしくお願い申し上げます。